なぜそうなるか
住まなくなった家を売るとき、3,000万円の特別控除はいつまで使える?——国税庁は「住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日まで」と書いていました
住み替えで新しい家に移ったあと、前の家がしばらく空いたままになることがあります。貸すか、売るか、決めきれないまま月日が過ぎていく、という話もよく聞きます。
家を売って利益が出れば、その利益には税金がかかります。ただ、自分が住んでいた家を売ったときには、利益から最高3,000万円を差し引ける特例がある、と耳にした方も多いはずです。
気になるのは、住まなくなってからでもその特例が使えるのか、使えるならいつまでなのか、という点でしょう。引っ越してから時間がたつほど、この問いは切実になります。
そこで、国税庁のタックスアンサー「No.3302 マイホームを売ったときの特例」を開きました。あわせて、同じく国税庁の「No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例」も並べて読んでいます。
どちらのページも、冒頭に「令和8年4月1日現在法令等」と時点が書かれていました。記事の中の条件の言い回しは、この2つのページの書き方のままです。
手元の家に特例が当てはまるかどうかは、この記事では判断しません。所有の経緯や家族の住まい方によって答えが変わるので、最後は所轄の税務署に確かめる前提で読んでください。
・マイホームを売ったときは、譲渡所得から最高3,000万円まで控除できる特例がある
・以前に住んでいた家は、住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る場合に限られる
・家を取り壊して敷地だけ売る場合は、取り壊した日から1年以内の契約などの条件が加わる
・親子や夫婦など「特別の関係がある人」に売った場合は対象にならない
・特例を受けるには、書類を添えて確定申告をする必要がある
そもそも、どんな特例なの?
家を売ったときの「3,000万円」って、何から引かれるの?
No.3302 は、概要の最初の一文で特例の中身を示していました。
続けて、この特例の正式な呼び名が「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」だと添えられています。所有期間の長さを問わないという書き方が、最初に置かれている点は覚えておきたいところです。マイホーム(居住用財産)を売ったときは、所有期間の長短に関係なく譲渡所得から最高3,000万円まで控除ができる特例があります。
引かれる先は、売った金額そのものではなく「譲渡所得」です。売った金額から、買ったときの費用や売るためにかかった費用を差し引いた利益の側から、3,000万円を上限に控除する、という位置づけになります。
住まなくなった家は、いつまでに売ればいいの?
引っ越してから何年かたっても、この特例は使えるの?
No.3302 は、特例の対象になる資産をイからホの5つに分けて並べます。今住んでいる家がイで、以前に住んでいた家はロです。ロの括弧書きは、次のとおりでした。
期限は「3年後の同じ日」ではなく、3年を経過する日が入っている年の、12月31日で区切られています。以前に住んでいた家屋(住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る場合に限ります。なお、その家屋は、住まなくなった日以後、どのような用途に使用してもかまいません。)
期限の数え方の例
たとえば、住まなくなった日が2024年6月1日だったとします。そこから3年を経過する日は2027年の中にあるので、この書き方に当てはめると、売る期限は2027年12月31日になります(当方の計算です)。
どの日を「住まなくなった日」とみるかは、今回読んだ2つのページには書かれていませんでした。日付が期限に近い方は、税務署に確かめてください。
空いている間に貸していても、対象から外れないの?
括弧書きの後半に「どのような用途に使用してもかまいません」とありました。住まなくなったあとの家の使い方は、ロの条件としては問われていない、という書き方です。
家を取り壊して、土地だけ売る場合は?
古い家を壊して更地にしてから売っても、同じように使えるの?
No.3302 のニは、家屋を取り壊した場合のその敷地です。当てはまる条件の1つ目は、次の一文でした。
その敷地の譲渡契約が、家屋を取り壊した日から1年以内に締結され、かつ、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。
2つ目の条件は、取り壊してから譲渡契約を結ぶまでの使い方です。
建物が建っている間は用途を問わないのに対し、更地にしたあとの土地は、貸駐車場などに使うと条件から外れる、という並びになっています。家屋を取り壊してから譲渡契約を締結した日まで、その敷地を貸駐車場などその他の用に供していないこと。
家族に売っても使えるの?
子どもや親戚に家を買ってもらう場合も、同じ特例になるの?
No.3302 の要件の(5)は、買い手との関係についての条件です。
親子や夫婦など「特別の関係がある人」に対して売ったものでないこと。
「特別の関係がある人」の中身は、すぐ下の一文で広げられていました。
親族なら誰でも外れる、とは書かれていません。生計を一にしているか、売ったあとその家で一緒に住むかが、名前の挙がっている区切りです。手元のケースがどちらに当たるかは、このページだけでは決められません。「特別の関係がある人」には、このほか生計を一にする親族、家屋を売った後その売った家屋で同居する親族、内縁関係にある人、特殊な関係のある法人なども含まれます。
ほかに外れる条件はある?
期限を守って、家族以外に売れば、それで使えるの?
No.3302 の要件は(1)から(5)までの5つです。売る期限と買い手の関係のほかに、残る3つは次のような内容でした。
- (2)売った年の前年および前々年に、この特例などの適用を受けていないこと
- (3)売った年、その前年および前々年に、マイホームの買換えや交換の特例の適用を受けていないこと
- (4)売った家屋や敷地等について、収用等の場合の特別控除など他の特例の適用を受けていないこと
あわせて、特例が適用されない家屋として3つが挙がります。特例を受けることだけを目的に入居したと認められる家屋、新築の期間中だけ仮住まいに使った家屋、別荘のように主として趣味や保養のために持つ家屋です。
家を2つ以上持っていた場合についても、一文がありました。売ったときに2つ以上マイホームを持っていたときは、主として住まいに使っていた家屋だけが対象になる、とされています。
軽減税率の特例とは、一緒に使えるの?
No.3305 は、長く持っていたマイホームを売ったときに、長期譲渡所得の税率を低くする特例のページです。その要件の(4)に、次の一文がありました。
ただし、居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例と軽減税率の特例は、重ねて受けることができます。
こちらの特例には、売った年の1月1日に家屋と敷地の所有期間がともに10年を超えていることという条件が別に付いています。売る期限のロの書き方は、No.3302 と同じでした。
使うための手続きは?
条件に当てはまれば、自動で差し引かれるの?
No.3302 の「手続き」の欄は短く、次の一文です。
条件に当てはまるかどうかとは別に、申告という手続きを通して受ける特例だということです。添える書類として挙がっているのは、譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)[土地・建物用]でした。この特例の適用を受けるためには、一定の書類を添えて確定申告をすることが必要です。
もう1つ、住まなくなってから売る場合に関わりそうな注記もあります。売買契約日の前日に住民票に書かれていた住所と、そのマイホームの所在地が違う場合などには、戸籍の附票の写しなど、住んでいたことを明らかにする書類もあわせて出すよう案内されています。
この記事で確認したこと
・マイホームを売ったときは、所有期間の長短に関係なく譲渡所得から最高3,000万円まで控除できる
・以前に住んでいた家は、住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る場合に限られる
・住まなくなったあとの家の使い方は、どのような用途でもかまわないとされている
・取り壊した場合の敷地は、取り壊した日から1年以内の契約で、その間に貸駐車場などに使っていないことが条件
・親子や夫婦、生計を一にする親族など「特別の関係がある人」に売った場合は対象にならない
・軽減税率の特例とは重ねて受けられる
・特例を受けるには、書類を添えて確定申告をする
期限は「3年後の同じ日」ではなく、3年を経過する日が入る年の年末で区切られています。売るかどうかを決める前に、住まなくなった日を書き出し、期限の年を自分で数えておくと、税務署に相談するときの話が早くなります。
よくある質問
住まなくなった家を人に貸していても、対象になりますか
No.3302 のロには「その家屋は、住まなくなった日以後、どのような用途に使用してもかまいません。」とあります。ただし、手元の家がほかの要件を満たすかどうかは別の問題なので、この記事では判断していません。
売って損が出た場合も、この特例の話になりますか
No.3302 は、損が出た場合の特例を別のコード(No.3370 と No.3390)として関連リンクに並べていました。この記事で読んだのは利益が出た場合の控除のページだけなので、損が出た場合の扱いは、それぞれのページで確かめてください。
相続した親の家を売る場合も同じですか
No.3302 の関連リンクには、別に「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」が挙がっていました。親の家を売る場合は、この記事で読んだページとは別に、専用のページが用意されている形です。
この整理が変わる条件
- 国税庁が No.3302 または No.3305 の内容を改めた場合(どちらも「令和8年4月1日現在法令等」と時点が書かれている)
- 租税特別措置法の改正で、特例の要件や期限が変わった場合
- 確定申告に添える書類の様式が変わった場合
出典
- 国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3302.htm
- 国税庁「No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3305.htm
家を売る前に、要件と期限を、所轄の税務署と国税庁の最新のページで確かめてください。
当方が上の出典を引いて確かめた日: